個人事業者が法人成りをした場合の消費税の納税義務
年の中途において個人事業者が法人成りをした場合には、
消費税の納税義務の判定は、事業者単位で行うことになります。
法人成りをする前の個人事業と法人成り後の法人とは別々に判断することになります。
したがって、個人事業者の基準期間における課税売上高は、
法人の基準期間における課税売上高とはなりません。
事業用資産の引継ぎを課税資産の譲渡であるとした事例
事業用資産及び当該資産と同額の負債を法人に引継いだ場合、
現物出資ではなく、負債の引受額を課税資産の譲渡とした事例を紹介します。
(裁決事例集 NO.76 平成20年12月15日 裁決)
消費税の課税対象は、「国内において事業者が事業として対価を得て行われる資産の
譲渡等」と解されるところ、消費税法において資産(非課税取引を含む)及び負債が
一体となった「営業」それ自体を一つの課税客体ととらえて課税対象とする規定は
存在しません。
譲渡された資産の相手勘定を負債とした法人における仕訳処理は、
本件法人成りにおいて負債の引受けが資産の引受けの反対給付である証であり、
請求人は、資産の譲渡の対価として法人から金銭の収受する代わりに負債を引受け
させ、債務の支払義務の消滅という経済的利益を得たものであるから、
当該負債の引受額は消費税法における資産の譲渡の対価の額に相当する。
法人設立(第1期目)の事業年度の検討
(Q) 個人事業を行っており、
今年の1月1日から6月30日までの半年間の売上高が2,000万円、
従業員の給与総額が1,100万円でした。
個人事業を廃止して、法人を設立しようと検討していますが、
法人設立時、消費税の負担を免除できるような制度はありますか?
(A) 一般的な法人設立を想定してご回答したいと思います。
■ 法人設立(第1期目)の消費税の検討
第1期目の事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円以上の場合には、
第1期目から消費税を納付することになります。
したがって、法人設立時の資本金の額が1,000万円未満の場合、
第1期目は、消費税を納付する必要はありません。
■ 法人設立(第2期目)の消費税の検討
第2期目の事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円以上の場合には、
第2期目から消費税を納付することになります。
以下は、第2期目の事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円未満の場合
1.第1期目の事業年度が7ヶ月以下の場合
第2期目は、消費税を納付する必要はありません。
2.第1期目の事業年度が7ヶ月を超える場合
@第1期目の事業年度開始の日から6ヶ月の期間の課税売上高が
1,000万円以下の場合には、消費税を納付する必要はありません。
A第1期目の事業年度開始の日から6ヶ月の期間の課税売上高が
1,000万円を超える場合には、課税売上高でなく、給与等支給額にて
判定することもできます。給与等支給額が1,000万円以下の場合には、
消費税を納付する必要はありません。
したがって、第1期目の事業年度開始の日から6ヶ月の期間の
@課税売上高が1,000万円を超え、かつ
A給与等支給額が1,000万円を超える場合、
第2期目は、消費税を納付する必要があります。
(ご質問のケースの場合)
■第1期目及び第2期目の事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円未満
の場合には、第1期目の消費税は納付する必要はありません。
■第2期目は、個人事業の段階で既に、半年間の売上高が2,000万円、
従業員の給与総額が1,100万円であることから、
法人設立の第1期目においても、個人事業の時と同様に、
売上高及び従業員の給与総額が1,000万円を超えると予想されます。
したがって、第1期目の事業年度を7ヶ月以下に設定をすれば、
第2期目の消費税は納付する必要はありません。
第1期目の事業年度を7ヶ月超に設定する場合、第2期目において、
消費税を納付する可能性が高まると思われます。
■個人事業の時の従業員の給与総額が1,000万円未満の場合においても、
法人の場合には、役員報酬を含めて給与総額1,000万円以下を判定します。
法人設立の時には、
役員報酬を加味して、第1期目の事業年度を検討する必要があります。
ご注意ください。